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パッケージとlibtoolの統合

この章は,ユーザが混乱せずに共有ライブラリをインストールできるように, パッケージとlibtoolの統合方法を記述します.

libtoolに対する`Makefile'規則を書く

libtoolは,完全にAutomake(see section `Introduction' in The Automake Manual)と統合されていて,それはAutomake version 1.2から開始 されています.

通常の`Makefile'(や`Makefile.in')で,libtoolを使用したい場合 は,独自のものとなります.Automake 1.2を使用せず,パッケージにlibtool の組み込み方を知らない場合,以下の一つが必要になります.

  1. Automake(バージョン1.2以降)を近くのGNUのミラーからダウンロードし,イン ストールし,その使用を開始してください.
  2. `Makefile'規則の手での書き方を学んでください.複雑なときもありま すが,古いライブラリをコンパイルするための規則を書けるぐらいの知識があ る場合,libtoolライブラリに対する新しい規則の理解は可能でしょう(ヒント: libtool 配布物の`demo'サブディレクトリの`Makefile.in'を調べ てください... 特に,それがAutomakeによって`Makefile.am'から自 動的に生成されたことに注意してください).

libtoolと共にAutomakeを使用する

libtoolライブラリのサポートは,`LTLIBRARIES'プライマリの下で実装 されています.

libtool配布物の`demo'サブディレクトリの,Automake `Makefile.am'からの例は,以下のようになっています.

最初に,プログラムをlibtoolライブラリとリンクするため, `program_LDADD'変数のみを使用してください.

bin_PROGRAMS = hell hell.debug

# Build hell from main.c and libhello.la
hell_SOURCES = main.c
hell_LDADD = libhello.la

# Create an easier-to-debug version of hell.
hell_debug_SOURCES = main.c
hell_debug_LDADD = libhello.la
hell_debug_LDFLAGS = -static

フラグ`-dlopen'`-dlpreopen'(see section リンクモード)は, program_LDADD変数で,より適切になります.残念ながら,リリース1.4 までのGNU automakeは,program_LDADD変数でこれらのフラグを受け入 れないため,以下で代用します.

(インストールされていない共有libtoolライブラリとのリンクを避けるため `-static'を使用するような)`program'をリンクしている間, libtool に渡したいあらゆるフラグを詰め込むため,`program_LDFLAGS' 変数を使用することも可能です.

libtoolライブラリをビルドすることは,ほとんど冒険です... `-version-info'(see section ライブラリインターフェースのバージョン)オプションをlibtoolに渡すため, `libhello_la_LDFLAGS'を使用することに注意してください.

# Build a libtool library, libhello.la for installation in libdir.
lib_LTLIBRARIES = libhello.la
libhello_la_SOURCES = hello.c foo.c
libhello_la_LDFLAGS = -version-info 3:12:1

`-rpath'オプションは,(noinst_LTLIBRARIESとしてリストアッ プされるライブラリ以外)Automakeにより自動的に渡されるので,指定する必 要はありません.

詳細は,See section `The Automake Manual' in The Automake Manual.

libtoolのコンフィグレーション

libtoolは,共有ライブラリを作成し適切なものにリンクするため,コンパイ ラセットとオペレーティングシステムの詳細な知識を必要とします.libtool 配布物をインストールするとき,システム特有のlibtoolスクリプトはバイナ リディレクトリにインストールされます.

しかし,独自のパッケージとともにlibtoolを配布するとき (see section パッケージにlibtoolを含める),パッケージをコンパイルするために使用されるコン パイラセットとオペレーティングシステムを,常に知っているわけではありま せん.

このため,libtoolを使用する前にコンフィグレーションする必要があ ります.この考えは,GNU configureスクリプトを使用するものに似て います.configureは,システムの特徴に対しいくつものテストを行い, `Makefiles'(と,おそらく`config.h'ヘッダファイル)を生成し, その後,makeを実行しパケージをビルドすることが可能です.

libtoolは,インストーラのホストマシンに対するlibtoolスクリプトを生成す るために,独自のテストをconfigureスクリプトに加えます.

AC_PROG_LIBTOOLマクロ

GNU Autoconf(やAutomake)を使用している場合,AC_PROG_LIBTOOLの呼 び出しを`configure.in'に加える必要があります.このマクロは,生成 されたlibtoolスクリプトがホストの特徴を理解できるようにするため,多く の新しいテストをconfigureスクリプトに加えます.

Macro: AC_PROG_LIBTOOL
Macro: AM_PROG_LIBTOOL
`--enable-shared'`--disable-shared'configureフラ グに対するサポートを加えます.(5) AM_PROG_LIBTOOLは,このマクロに対する古い名前で, しばらくはサポートされますが,やめた方がいいでしょう.

デフォルトで,このマクロは,利用可能な場合は共有ライブラリを開始し,共 有ライブラリと衝突しない場合はスタティックライブラリも可能とします.こ れらのデフォルトは,AC_DISABLE_SHAREDAC_DISABLE_STATIC マクロのどちらかで修正可能です.

# Turn off shared libraries during beta-testing, since they
# make the build process take too long.
AC_DISABLE_SHARED
AC_PROG_LIBTOOL

ユーザは,パッケージ名を基にビルドされる,共有またはスタティックライブ ラリを選択するため,`--enable-shared'`--enable-static'を @command{configure}へのフラグとして変更を指定してもかまいません.例え ば,共有する`bfd'`gdb'ライブラリをビルドし,`libg++' を共有にしないため,以下のconfigureスクリプトの実行で,三つのこ とのすべて可能となります.

trick$ ./configure --enable-shared=bfd,gdb

一般的に,`--enable-shared=pkgs'の指定は,カンマで分けられ たpkgsリストに名前があるすべてのパッケージを `--enable-shared'で,それ以外のすべてのパッケージを `--disable-shared'でコンフィグレーションすること同じです. `--enable-static=pkgs'フラグは,同様に動作しますが,その場 合は`--enable-static'`--disable-static'を使用します.同様 に,`--enable-fast-install=pkgs'フラグの適用は, `--enable-fast-install'`--disable-fast-install'を使用しま す.

パッケージ名`default'は,PACKAGE環境変数に名前が設定されて いない,あらゆるパッケージに一致します.

このマクロは,シェル変数LIBTOOL_DEPSも設定し,それで,libtoolス クリプトが時代遅れになった場合の自動的な更新に使用できるようになります. そうするために`configure.in'に以下を加えてください.

AC_PROG_LIBTOOL
AC_SUBST(LIBTOOL_DEPS)

そして,`Makefile.in'`Makefile.am'に,以下を加えてください.

LIBTOOL_DEPS = @LIBTOOL_DEPS@
libtool: $(LIBTOOL_DEPS)
        $(SHELL) ./config.status --recheck

GNU automakeを使用してる場合,automakeが面倒をみるので,指示の省略が可 能です.`libtool'での依存性を明確に作成する必要があります.

Macro: AC_LIBTOOL_DLOPEN
dlopenサポートの調査を可能にします.パッケージで`-dlopen'`-dlpreopen'フラグを使用する場合,このマクロ使用すべきで,そうし ない場合,libtoolはシステムがdlopenをサポートしていないと仮定します. マクロはAC_PROG_LIBTOOL前で呼び出す必要があります.

Macro: AC_LIBTOOL_WIN32_DLL
このマクロは,win32プラットフォームでクリーンなdllをビルドするために移 植する場合,使用する必要があります.通常これは,あらゆるライブラリデー タ項目を__declspec(dllexport)でエクスポートし, __declspec(dllimport)でインポートすることを意味します.このマク ロが使用されていない場合,libtoolはパッケージライブラリがクリーンなdll ではなく,win32ホストでのスタティックライブラリのみをビルドすると仮定 します.

このマクロはAC_PROG_LIBTOOL前で呼び出す必要があり, パッケージのMakefileでのリンクモードでの準備として, libtool`-no-undefined'を渡させる必要があります.通常, `-no-undefined'を渡す場合,すべてのライブラリシンボルが,リンク時 には本当に定義されていることを確かめる必要があります!

Macro: AC_DISABLE_FAST_INSTALL
AC_PROG_LIBTOOLのデフォルトの動作を,高速インストールに対する最 適化を不可能にするよう変更します.ユーザはこのデフォルトを,プラット フォームのサポートに依存して,`--enable-fast-install'を指定するこ とで優先させることができます.

Macro: AC_DISABLE_SHARED
Macro: AM_DISABLE_SHARED
AC_PROG_LIBTOOLのデフォルトの動作を,共有ライブラリを利用不可能 に変更します.ユーザはこのデフォルトを,`--enable-shared'を指定す ることで優先させることができます.

Macro: AC_DISABLE_STATIC
Macro: AM_DISABLE_STATIC
AC_PROG_LIBTOOLのデフォルトの動作を,スタティックライブラリを利 用不可能に変更します.ユーザはこのデフォルトを,`--enable-static' を指定することで優先させることができます.

AC_PROG_LIBTOOL内のテストは,以下の環境変数も認識します.

Variable: CC
生成されたlibtoolが使用するCコンパイラです.これが設定されてい ない場合,AC_PROG_LIBTOOLgccccを探します.

Variable: CFLAGS
標準的なオブジェクトファイルを生成するために使用するコンパイラフラグで す.これが設定されていない場合,AC_PROG_LIBTOOLはそのようなフラ グを全く使用しません.それは,AC_PROG_LIBTOOLがテストを実行する 方法にのみ効果があり,生成されたlibtoolには効果はありません.

Variable: CPPFLAGS
Cプリプロセッサフラグです.これが設定されていない場合, AC_PROG_LIBTOOLはそのようなフラグを全く使用しません.それは, AC_PROG_LIBTOOLがテストを実行する方法にのみ効果があり,生成され たlibtoolには効果はありません.

Variable: LD
(生成されたlibtoolが要求する場合は)システムリンカです.これが設 定されていない場合,AC_PROG_LIBTOOLは,CCで使用されるリン カが何かを判別しようとします.

Variable: LDFLAGS
プログラムをリンクするとき,libtoolが使用するフラグです.これが 設定されていない場合,AC_PROG_LIBTOOLはそのようなフラグを全く使 用しません.それは,AC_PROG_LIBTOOLがテストを実行する方法にのみ 効果があり,生成されたlibtoolには効果はありません.

Variable: LIBS
プログラムのリンクとき,AC_PROG_LIBTOOLが使用するライブラリです. これが設定されていない場合,AC_PROG_LIBTOOLはそのようなフラグを 使用しません.それはAC_PROG_LIBTOOLが実行するテストにのみに効果 があり,生成されたlibtoolには効果はありません.

Variable: NM
使用するプログラムで,nmの調査ではありません.

Variable: RANLIB
使用するプログラムで,ranlibの調査ではありません.

Variable: LN_S
プログラムのリンクを作成するコマンドで,可能な場合はソフトリンク,それ 以外ではハードリンクです.この変数が設定されていない場合, AC_PROG_LIBTOOLは適切なプログラムを調査します.

Variable: DLLTOOL
使用するプログラムで,dlltoolの調査ではありません. Cygwin/MS-Windowsでのみ意味があります.

Variable: OBJDUMP
使用するプログラムで,objdumpの調査ではありません. Cygwin/MS-Windowsでのみ意味があります.

Variable: AS
使用するプログラムで,asの調査ではありません.しばらくは, Cygwin/MS-Windows でのみ使用されます.

libtoolizeプログラムを呼び出すとき(see section libtoolizeの呼び出し), それはAC_PROG_LIBTOOLの定義が見つかる場所を伝えます.Automakeを 使用している場合,aclocalプログラムは自動的に,configure スクリプトにAC_PROG_LIBTOOLサポートをconfigureスクリプト に加えます.

それにもかかわらず,`acinclude.m4'`libtool.m4'のコピーを含 めることは賢明で,そのため,`aclocal.m4'`configure'がなん らかの理由で再びビルドされた場合も,適切なlibtoolマクロが使用されます. 代わりに,ユーザが`libtool.m4'の互換バージョンをインストールして いて,aclocalにアクセス可能なことを期待します.これは,バージョ ンが一致しない場合,不運なエラーを導くかもしれません.

パッケージにlibtoolを含める

libtoolを使用するため,パッケージに以下のファイルを含める必要があります.

`config.guess'
標準的なシステム名の判別を試みます.
`config.sub'
標準的なシステム名を評価する,サブルーチンスクリプトです.
`ltmain.sh'
基本的なlibtool機能を実装する一般的なスクリプトです.

libtoolスクリプト自身はパッケージに含まれないことに注意してください. See section libtoolのコンフィグレーション.

手動でこれらのファイルをパッケージにコピーするより,libtoolize プログラムを使用した方がよいでしょう.

libtoolizeの呼び出し

libtoolizeプログラムは,libtoolサポートをパッケージに追加する標 準的な方法を提供します.将来は,より良い調査の使用法や,より簡単に libtoolを作成する機能を実装するかもしれません.

libtoolizeプログラムは以下の構文です.

libtoolize [option]...

そして,以下のオプションを受け入れます.

`--automake'
静かに動作し,libtoolがサポートされているAutomakeを仮定します. `libtoolize --automake'は,AC_PROG_LIBTOOL`configure.in'にあるとき,Automakeがlibtoolファイルをパッケージに 追加するために使用します.
`--copy'
`-c'
libtoolデータディレクトリから,シンボリックリンクを作成するのではなく, ファイルをコピーします.
`--debug'
シェルスクリプトの実行の追跡を,標準出力にダンプします.これは大量の出 力を生成するため,less(やmore)にパイプしたり,ファイルに リダイレクトしたいかもしれません.
`--dry-run'
`-n'
ファイルシステムを変更するコマンドは実行せず,それらを出力するだけです.
`--force'
`-f'
既存のlibtoolのファイルを置換します.デフォルトで,libtoolizeは 既存のファイルを上書きしません.
`--help'
へルプメッセージを出力し終了します.
`--ltdl'
パッケージのサブディレクトリに,libltdlをインストールします.
`--ltdl-tar'
ファイルlibltdl.tar.gzをパッケージに追加します.
`--version'
libtoolizeのバージョン情報を出力し終了します.

libtoolizeが,パッケージの`configure.in'で,明確な AC_CONFIG_AUX_DIRの呼び出しを検出した場合(see section `The Autoconf Manual' in The Autoconf Manual),指定されたディレクト リにファイルを配置します.

libtoolizeは,パッケージにlibtoolサポートを加えるヒントも同様に 表示します.

Autoconfの`.o'マクロ

Autoconfパッケージは,テストを実行するいくつかのマクロをもたらし,それ は,オブジェクトファイル名に対応して変数を設定します.libtoolオブジェ クトに対応する名前を使用する必要があるときもあります.

libtoolオブジェクトがリストアップする変数名には以下のものがあります.

Variable: LTALLOCA
AC_FUNC_ALLOCAで置換されます(see section `The Autoconf Manual' in The Autoconf Manual).空,または`alloca.lo'を含みます.

Variable: LTLIBOBJS
AC_REPLACE_FUNCS(see section `The Autoconf Manual' in The Autoconf Manual)とその他の 関数で置換されます.

残念ながら,安定版のリリースのAutoconf(これを書いている時期は,2.13)は, libtoolでこれらの変数を提供する方法が全くありません.そのため,それに 依存して,パッケージの`configure.in'AC_OUTPUTを呼び出す 前に,以下のコードの実装を使用してください.

LTLIBOBJS=`echo "$LIBOBJS" | sed 's/\.[^.]* /.lo /g;s/\.[^.]*$/.lo/'`
AC_SUBST(LTLIBOBJS)
LTALLOCA=`echo "$ALLOCA" | sed 's/\.[^.]* /.lo /g;s/\.[^.]*$/.lo/'`
AC_SUBST(LTALLOCA)
AC_OUTPUT(...)

スタティックのみのライブラリ

パッケージを開発しているとき,パッケージを`--disable-shared'フラ グでコンフィグレーションしたり,AC_DISABLE_SHAREDAutoconfマクロ (see section AC_PROG_LIBTOOLマクロ)を使用し て,AC_PROG_LIBTOOLのデフォルトに優先することに価値があることも よくあります.これは,libtoolが共有ライブラリをビルドすることを避け, それには,いくつかの利点があります.

パッケージの`README'に,他の開発者に`--disable-shared'で時間 を稼げることを知らせるため,ちょっとした注意を書きたいかもしれません. 以下の例の注意は,GIMP(6) 配布物の`README'から持ってきました.

The GIMP uses GNU Libtool in order to build shared libraries on a
variety of systems. While this is very nice for making usable
binaries, it can be a pain when trying to debug a program. For that
reason, compilation of shared libraries can be turned off by
specifying the `--disable-shared' option to `configure'.


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